寺山修司「ポケットに名言を」
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最終更新日:2013/11/08
書評
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この本の中から名言を1つだけ選べと言われたら、迷わずこれをセレクトすると思う。
鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは一つの世界を破壊せねばならぬ。鳥は神に向かってとぶ。神の名はアプラクサスという。
ヘルマン・ヘッセ「デミアン」
自分が今いる場所、例えば学校だとか、会社だとか、趣味の範囲だとか、認識の範囲だとか、それらが世界なのだと思っていても、実はそこには殻があって、その殻を破壊すると、外には新しい世界が待っているものである。
寺山修司はあとがきの中で以下のように書いている。
思想家の軌跡などを一切無視して、一句だけとり出して、ガムでも噛むように「名言」を噛みしめる。その反復の中で、意味は無化され、理性支配の社会と死との束縛から解放されるような一時的な陶酔を味わう。
そう。名言はガムなのだ。先ほどのデミアンの一節というガムを、僕は高校生の時から噛みしめ、殻を探しながら生きてきた。