フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

公開日: : 書評

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フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略

無料閲覧キャンペーンより入手御礼。

アトム経済からビット経済への移行、そしてムーアの法則によるチープ革命が引き起こす変化に適応するために読んでおきたい一冊。

以下、目次。

目次&特典

プロローグ

第1章 フリーの誕生

無料とは何か?

第2章 「フリー」入門

  ── 非常に誤解されている言葉の早わかり講座

第3章 フリーの歴史

  ── ゼロ、ランチ、資本主義の敵

第4章 フリーの心理学

  ── 気分はいいけど、よすぎないか?

デジタル世界のフリー

第5章 安すぎて気にならない

  ── ウェブの教訓=毎年価格が半分になるものは、かならず無料になる

第6章 「情報はフリーになりたがる」

  ── デジタル時代を定義づけた言葉の歴史

第7章 フリーと競争する

  ── その方法を学ぶのにマイクロソフトは数十年かかったのに、ヤフーは数ヶ月ですんだ

第8章 非収益化

  ── グーグルと二一世紀型経済モデルの誕生

第9章 新しいメディアのビジネスモデル

  ── 無料メディア自体は新しくない。そのモデルがオンライン上のあらゆるものへと拡大していることが新しいのだ

第10章 無料経済はどのくらいの規模なのか?

  ── 小さなものではない

無料経済とフリーの世界

第11章 ゼロの経済学

  ── 一世紀前に一蹴された理論がデジタル経済の法則になったわけ

第12章 非貨幣経済

  ── 金銭が支配しない場所では、何が支配するのか

第13章 (ときには)ムダもいい

  ── 潤沢さの持つ可能性をとことんまで追究するためには、コントロールしないことだ

第14章 フリー・ワールド

  ── 中国とブラジルは、フリーの最先端を進んでいる。そこから何が学べるだろうか?

第15章 潤沢さを想像する

  ── SFや宗教から、〈ポスト稀少〉社会を考える

第16章 「お金を払わなければ価値のあるものは手に入らない」

  ── その他、フリーに対する疑念あれこれ

結び ── 経済危機とフリー

巻末付録(1):無料のルール──潤沢さに根ざした思考法の10原則

巻末付録(2):フリーミアムの戦術

巻末付録(3):フリーを利用した50のビジネスモデル

日本語版解説(小林弘人)

http://www.freemium.jp/book

以下の、ブラジル・サンパウロにおける音楽を取り巻く状況についての記述が興味深かったので引用。

CDをつくっているのは地元のレコーディング・スタジオで、その多くは地元のDJによって運営されている。CDの音源は、CDジャケットの写真とともにDJがバンド本人から受け取ったものだ。DJたちは、地元のイベントプランナーや露天商、ラジオ局と協力してライブのプロモーションをする。ときにはDJがそのすべてを兼ねて、自分が主催するライブのためにCDをつくり、販売し、宣伝することがある。

バンダ・カリプソは、CDの売りあげが自分たちの懐へ入ってこなくても気にしない。カリプソの主な収入源はライブ興行であり、それはうまくいっている。町から町を移動しながら、ライブ前にその町に激安のCDを大量に投入するやり方で、カリプソは年に数百回のライブをおこなう。通常は週末に二回か三回のライブを打って、国中をマイクロバスかボートで旅して回るのだ。

露天商はカリプソがこれから訪ねる町での先乗り宣伝チームだと言えるだろう。彼らは、一枚わずか75セント相当でCDを売ってお金を稼ぎ、見返りとしてCDを目立つように陳列する。露天商の安いCDが海賊版だとは誰も思っていない。それはたんなるマーケティング活動であって、路上経済を利用して、文字通りストリート・カルチャーにおける人気を獲得しているのだ。その結果、カリプソが町にやって来るときまでに、誰もがそのライブがあることを知っている。カリプソは野外イベントに大観衆を集めることができるが、そこで儲けとなるのは入場料だけではない。飲食物も売りあげとなる。また、バンドのスタッフはライブを記録してその場でCDやDVDに焼き2ドル程度で売る。それを買った観客は、今見たばかりのライブを繰り返し楽しむことができるというわけだ。

カリプソのCDはすでに1000万枚以上売れているが、そのほとんどはバンド自身が売ったものではない。そして、それはカリプソに限ったことではない。テクノ・ブレーガー業界には今や何百ものバンドがあって、毎年何千回ものライブが行われている。リオ・デ・ジャネイロのジェトゥリオ・ヴァルガス財団が運営する技術・社会研究所のロナウド・レモスと同僚による調査の結果、この業界はCDからライブまですべてを含めると、一年間に2000万ドルの収入があることがわかっら。

音楽・映像・ソフトウェアは、デジタルによって安価に高速にコピー可能となってしまった。配布に関する限界費用が気にならないほど安いこれらのメディアを最大限活用するには、一体どうすればいいのか?CDというメディアに収めて売るというのは、もはや非常に古く、現状にそぐわない、非常にいびつな行為となってしまった。彼らはコストをかけずに幅広くプロモーションが行える手段として割り切り、ライブの周囲で発生する入場料や飲食物販売による売りあげで収益を得ているのだ。

本書ではブラジルの音楽事情に限らず、Webサービスの収益化やソフトウェアの販売などに関する有効な戦略について多数の考察がなされているので、IT業界で働いている方々にオススメできる一冊です。

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